朗読原稿を作る1

朗読コラム

朗読を発表しようとする時、課題作品でなければ自分で作品を選ばなければなりません。

まず何分間で読める作品なのか規定時間が気になります。そして自分はどういう作品を朗読したいのか。今回の朗読の聴き手はどのような方々なのか。さまざまな条件をクリアーして選ばなければいけません。

作品が決まった後、例えそれが短篇小説であったとしても、抜粋することなく時間内に全てを読むのはほぼ皆無ではないでしょか。

抜粋をして朗読作品を作る、これは朗読者なら誰もが経験する大変労を要する作業です。

 

『作品の最初から最後まで起承転結を入れて一作品にする』という場合、どうしても規定時間を越えてしまうことが往々にしてあります。起承転結を入れるがあまり、あらすじのようになってはつまらないので注意が必要です。

『作品冒頭から規定時間内に収まるところまでを一作品にする』という方法もあります。これは聴き手に「この続きが聴いてみたいな」と思ってもらえればシメタもの。しかし作品冒頭にインパクトがなければ、盛り上がりに欠ける難点があります。

『作品の最も盛り上がる箇所だけ、規定時間に収める』方法もあります。

それと似た抜粋方法では、『作品の中で自分の好きな箇所だけを一作品にする』やり方です。この場合、聴き手にある程度のストーリー説明をする必要が出てくる場合があります。

 

抜粋をして朗読原稿を作る場合、私はいつも作者に「申し訳ありません!」という気持ちになります。作者にとって作品の中の一語一句は、血肉の通ったとても貴重なものに違いありません。それを朗読原稿にするためにバッサリバッサリ削り落とす訳ですから、大変罪なことです。

著作権使用料が発生する作家で、それを支払わなくてはいけない公演の場合、抜粋するならば使用不可の作家もあります。無料の朗読会などでよく使われる藤沢周平がその一例です。

 

自分が朗読する作品の作者に対して、尊敬と感謝の思いをしっかりと持ちたいものです。そして作者の思いを充分に解釈し、発表したいものですね。

朗読者は文字で書かれた作品を声で聴き手に届ける橋渡しをする者です。同じ作品でも朗読で聴くことで、黙読とは違った良さを出すことが出来れば嬉しいです。

2021.10.21

朗読アカデミー四季の森

講師 葛村聡子