今年、令和3年の古典の日朗読コンテストの課題作品のひとつに「枕草子」が選ばれました。
「枕草子」は女性歌人の清少納言が平安中期に綴った随筆で、教科書にも掲載される有名な作品で知られています。その「枕草子」は季節に関する話から始まります。
「春はあけぼの
やうやう白くなりゆく山ぎは
少し明かりて
紫立ちたる雲の細くたなびきたる」
これは春の夜明け、山と空の境目がだんだんと明るくなってくる様が、何とも言えず良い様子であることを描いた一文ですが、四季のある日本では、殊にこの時代は春夏秋冬を描くとき、時間帯に着目した作品は非常に珍しく、春は花・夏はホトトギス・秋は紅葉・冬は雪といったものが多く描かれています。清少納言の多角的な視点と破天荒さが伺える、面白い作品だと捉えることができます。
また、これとは対照的な作品が唐の詩人、孟浩然(もうこうねん)が読んだ漢詩「春暁(しゅんぎょう)」です。
「春眠暁を覚えず」の書き出しで始まる、こちらもとても有名な作品です。
春眠暁を覚えず
処処啼鳥を聞く
夜来風雨の声
花落つること知る多少ぞ
春の眠りは気持ち良く、夜が明けるのにも気が付かないという意味ですが、早起きして、だんだんと夜が明けて行く様子を楽しむのか、布団でまどろみながらもうひと眠りするか。
どちらの春も心惹かれるものがあります。(私は今のところ、後者が優勢かも?)
皆さんはどちらに魅力を感じますか?
コンテスト等で課題が決まっている場合は別ですが、自分で朗読作品を選ぶ時は、作品に心がどれだけ寄り添えるかも大切な要素です。
今、なぜ、この作品を朗読したいと思ったのかを自分に問いかけてみると、これまで気付かなかった別の自分を発見できるかもしれませんね。
私は今、春に限らず朝寝坊が大好きだということを再認識しています。
朗読アカデミー四季の森 久保朗読教室 講師 久保和子
2021.6.10